摩電楼あとがき…という名の


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素敵な合作が投稿されましたね。私もこちらの合作に主催者様のご厚意で参加させていただきました。ありがとうございます。

私のパートは8:21-、ハンガリーブダペスト、こちらの地下鉄と路面電車の素材で作らせて頂いています。

 

ハンガリーという国

 ハンガリーはどこにあるかしってますか。ヨーロッパですね。じゃあヨーロッパのどのへんでしょうか。地図を見て下さい。真ん中らへんです。人はこの辺を中欧(せんとらるよーろっぱ)と呼びます。セントラルなんだろ?じゃあドイツとかフランスとかと並んでヨーロッパの大国だったのかというとそういうわけでも有りません。彼らは西欧でヨーロッパの中心はそっちの方に有りました。一方のハンガリーは長いゲルマン系に因る支配、一瞬の栄光を掴みましたが戦争に敗北し多くの土地を失いました。更に二回目の戦争の後は東側の社会主義陣営に組み込まれ長い期間ソ連の衛星国となりました。しかしハンガリー人達は、率先した反社会主義運動を起こし、更には東欧の社会主義国家が全滅する契機を作るなど「自由」を愛した人たちでした。(今のオルバンを筆頭とする体たらくには失望しますが)そんな物悲しくも素敵な歴史を持つのがこのハンガリーという国なのです。

 

ハンガリー語という言語

 言語のイントロのあるあるに「日本語の中の●●語」みたいな感じで日本語中のその言語由来の語彙を紹介する、なんてものがあります。じゃあハンガリー語にそれはあるのでしょうか。僕は専門家でもなんでもないのですが、思いつきませんでした。強いていうなら、「逃げるは恥だが役に立つ」というドラマが有りましたね。あれは"szégyen a futás, de hasznos"というハンガリーの諺に日本語訳です。因みにこんな諺は現地の人でもめったに使いません。諺専門の辞書をめくるとようやく見つかる程度のものです。

 そして本題。ハンガリー語はどういう言語なのか。これは後で詳しくご紹介するのでここでは省きますが、端的に言えば周りからめっちゃ浮いてる言語です。ヨーロッパに有りながらフィンランドエストニア等と並んでトルコ語、ましてや日本語等により近い仲間はずれの言語なのです。

 

解説

 文法の解説を交えながら、動画の補足をしていきます。前者のほうが比重が大きいかもしれません。単純な動画の解説を期待した人は耐えて下さい。そしてハンガリー語の楽しさに気づいて下さい。

 

 Ez az a M kettes Metró.

 この電車は地下鉄2号線です。

 日本の鉄道放送に近い形で意訳をしていますが、直訳するなら「これはM1番地下鉄です」とでもなります。Ezはこれという意味で主語にあたります。azは英語でいうbe動詞です。kettesは「2」Kettőの序数詞です。英語でいうとTwoとSecondの関係です。Metróはそのままメトロです。東京に限らずおおくの都市鉄道に「メトロ」は用いられます。ニュアンス的には地下鉄というよりも都市鉄道に近い感じですが。

 A Keleti pályaudvar következik.

 次は東駅です。

 ”Keleti pályaudvar”は日本語に訳すと東駅です。しかしこれはそれ自体が駅名なので正確に言うと「東駅駅」になるわけです。では「東駅」は一体何なのかというと国鉄ターミナル駅であり主要な国際列車が発着するブダペストの玄関口になっています。この駅の放送を差し込んだのはそんな理由です。余談ですが東へ行く(Keletibe megyek)というとブダペスト市民は、この駅(あわよくば市外へ旅行)へ行くと理解するらしいですね。

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東駅。眩しすぎ。
 Alkalmaznak az M négyes metróra.

 4号線は乗り換えです。

 直訳すると「接続する、4号線と」みたいな感じですね。最初のAlkalmaznakは動詞です。動詞の原形alkalmazに3人称複数を表す-nakという語尾をくっつけています。こういう風に単語に色んな要素を引っ付けることで、文中における単語の役割を表す言語のことを膠着(こうちゃく)語といいます。日本語もこの膠着語に分類されます。ヨーロッパの言語は基本的に屈折語とよばれる別のカテゴリに分類されるので、このハンガリー語はヨーロッパの中にありながら全く別の言語体系なので「異星人が話す言語」というようなレッテルを貼られるようなことも有りました。しかし、逆に日本からすれば同じ言語のカテゴリーにあたるので日本では「日本語に近い」なんて言われたりもします。まあそんな事言われながら全然似てないので苦労してるんですけどね。

 Kelenföld vasútállomás felé.

 ケレンフェルド鉄道駅行きです。

 4号線の始発放送です。vasútállomásが鉄道駅になります。東駅のところでpályaudvarが駅だと説明したじゃないか!話が違うとなるわけですが、pályaudvarが大きな駅で、vasútállomásが普通の駅という感じで駅の規模感に応じて使い分けているわけですね。パンピーレベルで駅の大きさによって単語を使い分けているという事実、素敵ですね。 

 Oktogon

 オクトゴン

 ここは解説するまでもないですかね。ここで使用した1号線はなんと世界唯一の地下鉄の世界遺産です。世界初の地下鉄はロンドンですが、あちらは蒸気機関車が牽引していました。こちらは開業当初から電化されており、現代の「地下鉄」の魁になるような存在です。と言っても実態は路面電車を地下に埋めたと言ったほうが実態に即しており、駅は約300m毎に設置されており、そこまで距離も長くないですね。以前参加した地下鉄合作でもこちらの路線を使用していますね。

 また、Oktogonという駅名(交差点名)はその名の通り、交差点が八角形であることに由来しています。主要な通りが交わる交差点として著名ですのでこの合作でも入れさせていただきました。また、ジャック・ブラックのあれはこちらの同パートの些細なリスペクトも含めさせていただいております。

 Széchenyi fürdő

 セーチェーニ温泉

 ハンガリーは温泉文化が盛んです。といっても日本で言う温泉というよりは温水プールと言ったほうが近いでしょうか。水着を着て混浴で入ります。特にセーチェーニ温泉ブダペストの中でも最も有名な温泉でしょう。調べたところごちうさの聖地かなんかにもなってるようですね。因みに温泉の画像を紛失してしまったのでここだけWikiで代用しております。情けないですね。

 Következő megálló Széchenyi István tér

 次の停車駅はセーチェーニイシュトヴァーン通りです。

 同じ「セーチェーニ」ですが場所は少し違います。そもそもセーチェーニはハンガリーの貴族の苗字なのでハンガリーのそこら中の町で通りの名前に見ることが出来ます。そしてセーチェーニ・イシュトヴァーンハンガリーの近代化に注力し、最終的には非業の死を迎えてしますが、国内では知らない人がいないほどの著名人です。そしてこの通りの一部としてドナウ川にかかるセーチェーニ鎖橋はまさにブダペストの象徴といっても過言ではない橋ですので、合作で採用しました。

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市営渡船から眺める夜の鎖橋


 因みにこちらの放送はこれまでとは打って変わって路面電車の放送になっています。この放送、実は自分の単作(私的)で地下鉄4号線の放送として使用してしまっていたという事実をこちらの合作を作る中で気づいてしまいました。あの当時はまだハンガリー語齧ってなかったから…と言い訳しても無駄ですね。少なくとも他の部分は間違えてないようだったので。取り敢えず事実誤認である旨につきお詫び申し上げます。

 Köszönöm

 ありがとう

 "Köszönöm."。ありがとうです。ハンガリーに行くなら覚えといて損のない単語です。行く気がなくても。この記事をここまで読んでくれた皆さん、是非これだけは覚えて帰って下さい。ケセネム、Köszönömですよ。

 

ハンガリー語のおすすめ文献とサイト

 ハンガリー語がやりたくなった皆様のためにおすすめサイトと文献をPICK UP!

 買わなくてもいいので、図書館で借りるだけでもいいですよ。やりなさいね。なお、ここを読み飛ばすの禁止です。ちゃんとハンガリー語に向き合って下さい。

 

ハンガリー語のしくみ(白水社、大島一) /1980

 文法はいいや…と思ってる方でもご安心を。このシリーズは言語の習得を目的にした学習書とは違い、読み物として言語を楽しめるコラム集になっています。基本的にどの図書館にもおいてあると思います。本当に名シリーズですので是非おすすめしたいですね。

 

ハンガリー語独習コンテンツ(大阪大学国語学部) /FREE

el.minoh.osaka-u.ac.jp

 無料です。とりあえずアクセスしてみて下さい。一通りの文法事項が抑えられると思います。ここから以下はすべて文法書になります。

 

 

ハンガリー語の入門(白水社、早稲田みか) !80

  概説書として解りやすいと思います。著者は今年4月に阪大外国語学部を退官された早稲田みか先生の著書です。文法書ではピカイチです。

 

・世界の言語シリ―ズ8 ハンガリー語大阪大学出版会、岡本真理) /3000

 こちらもかなり解りやすいと思います。大阪大学国語学部にある日本で唯一のハンガリー語学科における講義のエッセンスが凝縮した良著です。例外も余すことなく紹介されており、挫折することが有りません。

 

ハンガリー語Ⅰ (大学書林岩崎悦子) /6500

 鬼のような物量(と値段)。練習問題の多さはまるで中学生の英語ドリルのよう。これ全部こなしたら多分ハンガリー語は怖いものなしですね。Ⅱもあるのでそちらも併せてセットで。

 

おわり

 以上になります。動画のあとがきとか名打っておきながらハンガリーについての記事になってしましましたね。何はともあれこんな素敵な合作を企画してくれた主催者さん、運営の皆様、そして合作を盛り上げてくれた参加者の皆様。どうもありがとうございました。そしてコロナが逸早く収束し、また海外旅行に行ける日が来ることを心より願っております。Köszönöm, Szia!